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電気化学測定法である電気化学インピーダンス分光法(EIS)についての基礎的な内容です。
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電気化学インピーダンス分光法(EIS)について(3):回路素子のナイキストプロット

回路素子のナイキストプロットを一通り見ておきましょう。先ず、容量性成分のみからなる対象を考えてみよう(右図)。

回路素子として用いるコンデンサーです。直流的には電流が流れない。酸化還元がなにも起こらない電位領域にある電極の場合に相当する。すなわち、分極している電位領域にある電極に当たります。記号的にあらわすと、導線が途中でカットされている、直流的には電流は定常的には流れないことをあらわす意味で、実にわかりやすい。実体を象徴的にあらわす記号です。
容量の記号、式、ナイキストプロット

数式で表すとZ= 1/(jωC)ですがナイキストプロットでは虚軸と一致します。周波数が∞に近づくとインピーダンスはゼロに近づくことになる(ナイキストプロットでは原点に)。交流周波数が高いと交流電流はコンデンサーを容易に通り抜けていくわけです。逆に、周波数ゼロ、つまり直流ですが、電流は流れることができない。つまりインピーダンスは無限大になるわけですから、無限遠に発散し原点から垂直に立ち上がる直線になる。これが容量のナイキストプロットです(図の赤矢印→、虚軸に一致している)。

さて、これに抵抗をつなぐとどうなるか。つなぎかたには2通りのやり方がある。容量に並列か、直列かということです。抵抗というのはどういうことかというと、電子なりイオンが動こうとするとき、それを阻もうとする力が作用することです。電荷の移動に付随して現れる要素です。このような現象では電圧と電流の間には位相差は現れません。

右図の左はコンデンサーに抵抗を直列結合したものです。前図の容量のナイキストプロットを抵抗の大きさだけ実軸方向に平行移動したものです。

右は並列結合したものでプロットは半円になる。周波数無限大で原点に収束する。高周波数では容量側に多くの電流が流れ、極限ではインピーダンスゼロに、低周波数では容量のインピーダンスが大きくなるため、電流は抵抗側に多く流れ、ゼロ周波数の極限で、実軸上、抵抗値に等しいところに収束する。
容量と抵抗の直列および並列回路のナイキストプロット

このような並列結合は1つの素過程と考えられ、抵抗値×容量値=時定数になる。半円の頂点に対応する周波数の逆数が時定数に等しい。頂点周波数を知ることにより素過程の時間に関する情報が得られるという点でこのことは重要であり、頻繁に使われることを強調したい。左図は分極した電極に溶液抵抗だけ原点から並行移動したもの、右図は溶液抵抗がゼロにおける電子移動下の電極に相当しますが、溶液抵抗がゼロということはあり得ません。普通は溶液抵抗分だけ原点から並行移動した半円として頻繁にみるものです(初回の図)。左図については実際は垂直に立ち上がる直線ではなく傾いた直線か、湾曲気味の直線として見る場合が多くなります。

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