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電気化学測定法である電気化学インピーダンス分光法(EIS)についての基礎的な内容です。
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電気化学インピーダンス分光法(EIS)について(1):等価回路によるEIS結果解析の基本

電気化学系の解析手段としてEIS はかなりユニークな方法です。EISで一番多くお目にかかるのは下図の半円状のナイキストプロットでしょう(ナイキストプロットなどの術語は追々説明してゆきます)。
何故、頻繁にあらわれるのか。通常の電気化学の多くは不均一系の、つまり電極と溶液界面における電荷移動現象を扱う。不均一界面においてはプラスとマイナスの電荷対による二重層が形成される。即ち、電気容量です。そして電荷移動には活性化を要する。これは即ち、電気抵抗に相当する。
これら二つは、前後して逐次的過程で起こるというよりは、並列的に同時的に起こることが多い。抵抗と容量の並列回路(同時的過程)で置き換えられる状態、現象が非常に多いというわけです。

右図では理解を助けるために等価回路を挿入しています(等価回路とはEISを解析する際に現象、過程などを電子回路素子で置き換えて直観的に解釈する補助手段です)。容量Cと抵抗Rの並列回路とそれに直列の抵抗Rsからなる等価回路です。Cは電極界面二重層由来の容量とすると、並列の抵抗は電極活性物質に由来する電荷移動抵抗と考えられます。電荷移動速度が速い場合は抵抗が小さくなります。電荷移動速度は活物質の種類や濃度、電極の電位、供給される仕方など様々な因子に依存して変化する、とまあこんな図式です。

直列の抵抗Rsは何か。これはポテンショスタットでも補償しきれない未補償溶液抵抗、つまり作用電極と参照電極の間の溶液抵抗に対応します。即ち、ありふれた電気化学系の等価回路なのです。古くからRandles回路と呼ばれているものなのです。
ナイキストプロットの例

ナイキストプロットの有用性を説明しましょう。作用電極に微小振幅の可変周波数交流電位を印加した時のインピーダンス応答の実数成分と虚数成分をそれぞれ横軸、縦軸方向に、周波数をパラメータにしてプロットしてあります。高周波数では、容量Cによるインピーダンスはゼロに近づくため界面インピーダンスはゼロと見做せます(電荷移動抵抗は短絡されたと等価になるため効いてこない)。そうすると溶液抵抗だけが残る。つまり半円と実軸の交点のうち原点に近い方が溶液抵抗値Rsに対応することになる。

一方、低周波数では容量由来のインピ-ダンスは非常に大きくなり、結果として電荷移動抵抗成分だけが見えてくる。溶液抵抗Rsと電荷移動抵抗Rの和が原点から遠い半円と実軸との交点(周波数ゼロにおける)に対応することになります。半円の頂点の周波数fmax(ナイキストプロットでは、周波数は隠れたパラメータであるため、他のボードプロットから求まる)から、関係式 fmax=1/(2π RC) を使って容量値が計算できる。このようにして求めたい3つの値を知ることができるわけです。

fmaxの逆数は時間であり、過程の緩和時間、継続時間、寿命などの情報が得られる。一般に、ナイキストプロット上、高周波数は原点に近い方、遠い方は周波数ゼロに対応する。以上がナイキストプロットの典型的な使い方です。



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