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電気化学測定法である電気化学インピーダンス分光法(EIS)についての基礎的な内容です。
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電気化学インピーダンス分光法(EIS)について(2):周波数変化とEIS測定

EIS法では対象は定常状態にあること、つまり時間的に変動しない状態にあることが一般的には求められる。対象とする測定系に微小振幅の交流電圧をかける(微小条件は線形応答の要請に由来する)。印加電圧に応じて微小交流電流が流れる。応答電流の周波数は印加電圧の周波数と同じだが位相差が生ずる場合がある。純粋な抵抗のみからなる系だと位相差はゼロです。純粋な容量、コンデンサーならば90度の位相差が生じ交流電流の方が進む。

応答交流電流の振幅と位相差を測定するというのが基本です(従って、データの表現は基本的に2次元的になる)。このとき交流電圧の周波数を段階的に変化させる。周波数範囲は1 mHzから1 MHz程度を振ってやることになる。10倍の周波数範囲について5点くらい、予め設定した回数振ってやるというやりかたが一般的に行われている。従って、高周波数より低周波数での測定に、より時間がかかるということになる。1点にかかる時間は周波数によって違うから、測定対象は定常状態にあることが必要なわけです。

測定の基本を数式的に表すと次式になる。

インピーダンス測定の基本式
インピーダンスをZで表し、jは虚数単位、ωは周波数です。電圧Vや電流Iの上のドットは時間変動関数であることを示す。電圧と電流の振幅比がインピーダンスです。振幅比と位相差の2つのパラメータを測定するが、インピーダンスの実軸成分Z′と虚軸成分Z″に分解して表現するということが一般的にとられる。可変である周波数を含めると振幅と位相差の3つがパラメータになる。周波数範囲は典型的には1 mHzから1 MHzの9桁の広い範囲にわたる。周波数によって測定にかかる時間が異なる。低周波数では余計に時間がかかるので、対象が含む特性的な時間、時定数の大きさによっては適当に周波数範囲を狭くしてもよい。

インピーダンスデータを表示する方法として2つの代表的なやりかたがある。前回、例示したナイキストプロットと、もう一つボードプロットです。ナイキストプロットではインピーダンスの実数成分と虚数成分をそれぞれ、実軸と虚軸に描きます。このとき周波数を変数として描くが隠れた変数なので、あらわには見ることができないのが難点で、ナイキストプロットの不便なところです。しかし、系に含まれている素過程が複数あって、それらの時定数が相互に大きく離れている場合は特徴的な半円がいくつか組み合わさったプロットとして素過程の数だけ見える場合があり、直観的にわかりやすく、全体の見通しをえるのに便利です。

一方、ボードプロットは横軸を周波数の対数にとり、縦軸はインピーダンスの絶対値の対数および位相差をとる表示の仕方です。この表示の特徴はインピーダンスの絶対値や位相差が変化する周波数領域を見やすいことです。それぞれ特徴、長短があるのでナイキストとボードプロットを併せて示すことがわかりやすいかと思います。EISの解析にあたっては種々の電気化学素過程を、電子回路で用いられる素子(抵抗、コンデンサー(容量)、コイル(誘導)など)で置き換えることが一般的に行われています。電気化学素過程においては電子回路素子だけでは間に合わず、拡散現象に対応するワールブルグインピーダンス(自由拡散、限定拡散などを含む)や、容量を拡張したCPE(Constant Phase Element)なども加わります。



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