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6-4 アマルガム電極について

水銀電極上での酸化、還元反応が容易に行なわれるように特別に考え出されたものです。

このタイプの電極は、薄層セル中の作用電極の真上に補助電極が有ることが特徴です。電極材料として水銀を用いる利点は、深い負電位を印加できることにあります。
この電極では、水銀滴を金電極表面に落として薄層水銀にして使用します。振動やシステムの不安定さが悪影響を及ぼすHMDEやDMEに替わって、薄層化することによって、そういった心配はありません。このシステムの場合、溶存酸素が容易に水銀表面で還元されるめ、移動相からは溶存酸素を完全に除く必要があります。

1) 金/水銀電極の保存

 初めてこの電極を使用したり、長期間使用しなかった時は、金電極表面に新しい水銀膜を作る必要があります。それには、まず古いアマルガムを除き、洗浄し、金電極表面を再研磨してから、その表面に新しいアマルガムを形成します。 

2) 古いアマルガムの除去

古いアマルガムの除去:
1. 電極表面に6N硝酸を滴下すると、アマルガムが溶けて、溶液の色がグレー・ブラックから黄色に変化します。
2. この反応が2分以内に起こらなければ、硝酸溶液を交換して下さい。
3. 硝酸溶液を滴下しながら、ガラスピペットの先端で電極表面をこすって下さい。
4. 色が変化した後、蒸留水で洗浄し次の操作に移ります(図6-2参照)。
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3) 金電極表面の再生

 薄層水銀電極の最終的な出来の良し悪しが金表面の出来上がりに影響します。一般的により滑らかで、鏡のようになれば、良い電極ができます。手による研磨では、鏡面仕上げは困難ですが、次の様な手順で行えば容易に仕上がります。
 この手順は、三段階からなっていますが、必ずしも全て行なう必要はありません。例えば、研磨することなく新しい水銀膜を作ることも可能な場合があります。

  • 第一段階 分解した水銀を素早く除き、均一なアマルガムを形成するために、金表面の大きな凹みを無くします。
  • 第二段階 大まかな研磨をします。
  • 第三段階 アマルガム形成に良い状態に仕上げます。

 これらの全ての段階は、研磨キットに入っているもので行なうことが出来ます。研磨の最大の効果を出し、各パットの寿命を伸ばす為に、各段階ごとに水で洗浄するようにして下さい。流水で電極表面から研磨剤を洗い流し、各研磨剤が混ざらないようにして下さい。
 特に最終段階のアルミナ研磨に移る前には、粒子径が違うので、必ず洗浄するようにして下さい。古い水銀アマルガムを酸処理で金表面をあせた黄色にした後、新しいアマルガムを付けるため次の研磨を行います。

4) 粗削り

この研磨は、粗削り用パットに水を滴下して行います(図6-3参照)。
1. 表面を十分に水で湿らせます。
2. 電極表面をその上に押し付け、円を描くように動かし、軽く力を加えます。
 (大きな力を加えないようにして下さい。金表面に大きな傷を付けてしまいます。)
3. 研磨用パットを最大限に利用するために、パット全体で円を描くようします。
4. 30秒〜2分 程度研磨を行ないますと、表面が金色になります。
5. 長時間研磨を行なう場合、水を追加するかパットを交換して下さい。
6. 次の段階に移る前に、電極から完全に汚れを洗い落します。~
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5) 中間研磨

この研磨は、ダイヤモンド研磨剤とダイヤモンド研磨用パットを使用します。
( 図6-4参照)
1. ダイヤモンド研磨剤( オレンジ色のスラリー) を良く振ります
2. パットの上に8〜10 滴程度滴下し、研磨を始め金表面に輝きが出てくるまで行ないます。
3. 次の仕上げ段階に移る前に、完全に研磨剤を洗い落します。
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6) 仕上げ研磨

 この最終段階では、金表面を鏡のように仕上げます。

  1. アルミナ研磨用パット( フェルトの茶色のパット) に水を10 〜 20 滴滴下した( パットが湿る程度) 上にアルミナ研磨剤を5 〜 6 滴滴下して研磨を始めます( 図6-4 参照)。
  2. 3 〜 4 分後、蒸留水で完全に研磨剤を洗い流します。
  3. 表面は、水銀アマルガム電極を作るのに良い状態になっています。
  4. 表面を柔らかい紙(キムワイプ等) で拭きとると、金電極の表面は輝きます。
  5. 表面に小さな傷があってもセルの性能にはあまり影響しませんが、傷が大きい場合は、もう一度再研磨する必要があります。

7) 水銀アマルガムの作製

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水銀アマルガムを作る方法は幾つかありますが、ここでは、1 つの方法を紹介します。

 これは簡単で素早くでき、特別な技術を必要としません。水銀は揮発性なので、保存は所定の密閉コンテナーに入れておきます。金表面に水銀膜を作るには、研磨した金表面に少量の水銀をのせることで出 来上がります。( 図6-5 参照) 金表面が完全に水銀で覆われるようにします。
 2 〜 3 分後、余分な水銀は、コンピューターカードのようなものを使って擦り切ります。
水銀を除いたら、表面を鏡の様に輝くまで乾いた軟かいティッシュを用いて拭きます。
使用した水銀と余分な水銀は、保存しておきます。できるだけ多く余分な水銀を除くことが必要です。
 もし余分な水銀が表面に残っていると、カウンター電極が短絡して、ノイズの発生原因になります。このような時は、ガスケット(TG-8M) を更に一枚追加します。新しい水銀膜を作る毎に、常に古い水銀を除く必要はありません。

 新しい水銀アマルガムは、古い水銀に重層することができます。水とメタノールを使って表面から汚れを取り除いた後、少量の水銀を古いアマルガムの表面にのせます。
 余分な水銀は、前述のように除きます。乾いたティッシュで水銀を拭き取った後、電極は使用できる状態になっています。表面は再研磨を行なった時よりも粗いですが、どちらも同じように輝いています。

 普通、アマルガム化した後、安定化の時間が必要です。少なくとも6 時間放置して水銀アマルガム電極を形成させます。6 時間放置しないでアマルガム電極を使いますと、非常に高いバックグランドが発生し、電極応答も変化しますので、この安定化は必ず行なう必要があります。また、サンプル測定を行なう前に、必ず感度チェックを行なって下さい。

 アマルガム電極を使用してグルタチオン等のチオール系物質を測定する場合、移動相の溶存酸素がノイズの原因になりますので移動相の溶存酸素をヘリウム等のガスパージ操作により酸素を取り除くか、または LC-27A 脱気装置の連続脱気操作によりオンラインで酸素を除去して測定しませんと高感度な分析ができません。


目次:研磨方法について

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