はじめての分光器選び FAQ集 ~吸光度測定の基本からシステム選定まで~

マルチチャンネル分光器の選定では、「分解能を上げれば感度が下がる」「測定範囲を広げれば分解能が下がる」「検出器の素子数」といった複雑なトレードオフのバランスをどう取るか必要です。

本ページでは、分光器を選定する際に出てくるキーワードや、選定時のポイントをご紹介いたします。
分光器選びFAQ


Q.分光器(スペクトロメーター)とはそもそも何ですか?

A.混ざり合った光を波長(色)ごとに分け、それぞれの光の強さをセンサー(検出素子)で計測する装置です。物質によって特定の波長の光を吸収したり放出したりするパターン(スペクトル)が決まっているため、これを波長から定性分析、そのスペクトルの大きさから定量分析が行えます。 また、マルチチャンネル分光器の「マルチ」とは、光の強さを読み取る「検出素子(センサーの画素・チャンネル)」が複数並んでいることを意味しています。 分光器に入ってきた光を下記に説明するグレーティング(回折格子)という部品を使って虹色のように波長(色)ごとに分けます。この分けられた光を受け止めるための小さな画素(ピクセル)が、検出器の上に横一列にズラリと並んで配置されています(リニアアレイと呼ばれます)。


Q.カタログ仕様欄にある「グレーティング(回折格子)」とはなんですか?

A.混ざり合った光を波長(色)ごとに分ける、CDの裏面のような細かな溝が刻まれた部品です。この溝の数(刻線数)を増やすと波長分解能は向上しますが、一度に測定できる波長の範囲が狭くなり、光学系全体が暗くなって感度が低下するというトレードオフが発生します。


Q.カタログ仕様欄にある「波長分解能」と「感度」のトレードオフとは何ですか?

A.分光器の性能における「あちらを立てればこちらが立たず」のいわゆるシーソーの関係のことです。例えば、波長が近い2つの光を見分ける「波長分解能」を良くするために光の入り口(入射スリット)を狭くすると、取り込める光量が減り、暗い光を測るための「感度(スループット)」が低下してしまいます。
※分光器のトレードオフに関する一覧表はこちらをご覧下さい。


Q.カタログ仕様欄の「S/N比」が良いと何が嬉しいのですか?

A.S/N比(シグナル・ノイズ比)は、測定したい「信号(シグナル)」と不要な「雑音(ノイズ)」の比率です。この数値が高いほどノイズが少なく、微量成分の検出時などに信頼性の高いデータを得られます。光を読み込む時間(露光時間/積算時間)を長くするとS/N比は向上しますが、測定に時間がかかるというデメリットもあります。


Q.「透過率」と「吸光度」の違いは何ですか?

A.透過率とは、サンプルに光を当てた際にどれだけの光が通り抜けたかを示す割合です。一方、吸光度とは光がどれだけ吸収されたかを示す指標(透過率の逆数の対数)です。吸光度は物質の濃度および光が通る距離に比例するというランベルト・ベールの法則に従うため、未知のサンプルの濃度を正確に計算する定量分析には吸光度が用いられます。


Q.正確な吸光度測定に必要な「リファレンス」と「ダーク」とは何ですか?

A.吸光度を算出するための基準となるデータです。リファレンススペクトルは、サンプルが入っていない溶媒のみ(ブランク)を通過した光のデータです。ダークスペクトルは、センサーに全く光が当たっていない遮光状態のデータです。センサー自身が熱などによって発するノイズ(暗電流)を差し引き、正確なベースライン(0点)を設定するために不可欠です。SEC2120スペクトロメーターシステムに付属する制御ソフトSEC Spectraにはこの暗電流補正機能がございます。


Q.吸光度から「濃度」を計算するのは難しいですか?

A.「ランベルト・ベールの法則」に基づくモル吸光係数などのパラメータを入力する方法や、濃度が分かっている標準サンプルから「検量線」を作成する方法により、測定した吸光度から濃度を算出できます。検量線は手計算で行うことも可能ですが、SEC2120専用のソフトウェア(SEC Spectra)を使用すれば自動で検量線を作って濃度の算出が行えます。


分光器選びのFAQをとりまとめると

これらの気になるポイントを最適化し、初心者でも失敗なく高精度な測定ができるよう設計されているのがビー・エー・エスの「SEC2120スペクトロメーターシステム」です。分光電気化学測定などで初めてのシステム導入に最もおすすめできる商品となります。

  • 「広い波長域」と「高感度」のバランスに優れたSEC2121は、200〜1025 nmという幅広い領域を効率よくカバーできるグレーティングを採用しています。さらに、あえて1024画素のCMOSセンサーを搭載することで、2048画素などの高画素モデルと比べて感度が約2倍に向上しています。これにより、構造上の分解能(下限1.4 nm)を維持しつつ、微弱な光も確実に捉えることが可能です。

  • 紫外・可視域(UV-VIS)全体の感度バランスが平均化されているため、特定の波長だけが強すぎて生じるオーバーロード現象を回避しやすくなっています。また、最短100 µs(マイクロ秒)という超高速露光が可能なため、強い光の検出や短時間の変化もノイズを抑えて的確に測定できます。
CCDモデルとCMOS画素数別の感度差

分光器を選ぶ際の一般的なトレードオフに関する一覧表

選定要素 パラメータの変更 メリット (プラス面) デメリット (マイナス面)
スリット幅 狭くする 波長分解能が向上する
(波長を細かく分離できる)
感度(スループット)が低下
(取り込める光量が減り、暗くなる)
広くする 感度が向上する
(微弱光の測定が容易になる)
波長分解能が低下する
(波長分解能が悪くなる)
グレーティング
(回折格子)
刻線数を増やす
(溝を細かくする)
波長分解能が向上する 測定可能な波長範囲が狭くなる光学系全体が暗くなる(感度低下)
刻線数を減らす
(溝を粗くする)
広範囲の波長を測定できる 波長分解能が低くなる
露光時間
(積算時間)
長くする S/N比(信号対雑音比)が向上する
微弱な信号を検出できる
測定速度(FPS)が低下する
暗電流ノイズが増加する
センサーが飽和しやすくなる
短くする 測定速度(FPS)が向上する
暗電流ノイズが少ない
S/N比が低下する
感度が低くなる
(微弱光が見えにくい)
検出器の種類
UV-NIR域
CCD S/N比が良い暗電流が低い(冷却時) 読み出し速度が遅く消費電力が大きい
CMOS 読み出し速度が速く消費電力が小さい かつてはS/N比がCCD有利だった
(現在は同等かCMOSが逆転)
素子数 多い グレーティングとスリット幅に依存して波長分解能が良くなる場合がある 画素サイズが小さくなり感度が低下する
少ない 画素サイズが大きくなり感度が向上する グレーティングとスリット幅に依存して分解能が低くなる場合がある
冷却機能 あり 暗電流(熱ノイズ)を低減できる
長時間露光や微弱光測定に適する
筐体サイズが大きくなる
コストが増加する



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