電気化学測定および分光電気化学測定の基礎

電気化学測定および分光電気化学測定の基礎

ビー・エー・エスでは、電気化学及び分光電気化学アプリケーション向けの幅広い製品を提供しています。
ここでは、使用する測定サンプルの準備から、電気化学測定及び分光電気化学測定の基礎までについてをご紹介します。
測定サンプルは調製後に、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー)に使用します。

  • 測定サンプルの調製
  • 電気化学測定

サンプルの準備

このセクションでは、基本的な電気化学および分光電気化学測定で使用する測定サンプル溶液を調製します。
ここでの電気化学測定、分光化学測定および分光電気化学測定では、2 mM フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])を含む 1 M 硝酸カリウム(KNO3)水溶液、及び 2 mM フェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])を含む 1 M 硝酸カリウム水溶液 を使用します。

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フェロシアン化物イオンからフェリシアン化物イオンへの酸化反応は、殆どの電極において高速な可逆的電子移動反応です。典型的なサイクリックボルタンメトリーの例は、フェロシアン化物イオン(1 M 硝酸カリウム水溶液 中の 2 mM フェロシアン化カリウム)を含む溶液の電流-電位曲線です。この一電子酸化還元反応では、フェリシアン化物イオン Fe(CN)63- が酸化体、フェロシアン化物イオン Fe(CN)64- が還元体です。

1 M 硝酸カリウム水溶液 の調製

電気化学的に不活性である硝酸カリウム(KNO3)は、支持電解質として利用されています。支持電解質は、溶液に電気伝導性を与える他、電極表面と溶液間で電気二重層を形成したり、電気泳動の影響を防ぐために必要になります。
この 1 M 硝酸カリウム水溶液を使用して、フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])と フェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])の塩を溶解します。

図1:準備するもの:(1)硝酸カリウム、(2)薬包紙、(3)スパチュラ、(4)500 mL 三角フラスコ、(5)100 mL メスシリンダー、(6)蒸留水
図1:準備するもの
(1)硝酸カリウム
(2)薬包紙
(3)スパチュラ
(4)500 mL 三角フラスコ
(5)100 mL メスシリンダー
(6)蒸留水
図2:折り目を付けた薬包紙(2)を使用して、電子天秤で硝酸カリウム(1)を秤量します。
図2:折り目を付けた薬包紙(2)を使用して、電子天秤で硝酸カリウム(1)を秤量します。
図3:秤量した硝酸カリウムを500 mL 三角フラスコ(4)に移し、250 mLの蒸留水(6)で溶解します。蒸留水の量は、メスシリンダー(5)を用いて測ります。
図3:秤量した硝酸カリウムを500 mL 三角フラスコ(4)に移し、250 mLの蒸留水(6)で溶解します。蒸留水の量は、メスシリンダー(5)を用いて測ります。

  1. 薬包紙(2)を使用して、硝酸カリウム(1)25.28 gを秤量します(図2)。薬包紙は電子天秤にセットする前に折り目を付けておきます。硝酸カリウムは、スパチュラ(3)を使用して薬包紙に移すことで電子天秤が汚れる事を防ぎます。
  2. 秤量した硝酸カリウムを500 mL 三角フラスコ(4)に移し、蒸留水(6)をメスシリンダー(5)で計250 mLになるまで加えます。薬包紙を使用することで、硝酸カリウムを500 mL 三角フラスコに簡単に移すことができます。また、注ぎ口のあるメスシリンダーを使用することによって、蒸留水のこぼれを防ぎます。
  3. 1 M 硝酸カリウム水溶液(図3)は、後述の 2 mM フェロシアン化カリウム溶液 および 2 mM フェリシアン化カリウム溶液 の調製に使用します。

2 mM フェロシアン化カリウム溶液 および 2 mM フェリシアン化カリウム溶液 の調製

フェリシアン化カリウム(K3[Fe(CN)6])とフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])の塩を溶解するために、支持電解質として先ほど調製した 1 M 硝酸カリウム(KNO3)水溶液を使用します。

図4-1:2 mM フェリシアン化カリウム溶液の調製に必要なもの:(1)フェリシアン化カリウム、(2)スパチュラ、(3)50 mL ビーカー、(4)100 mL メスシリンダー、(5)ガラス棒(攪拌棒)、(6)100 mL メスフラスコ、(7)5 mL ピペット、(8)遮光ガラス瓶(保管用)
図4-1:2 mM フェリシアン化カリウム溶液の調製に必要なもの
(1)フェリシアン化カリウム
(2)スパチュラ
(3)50 mL ビーカー
(4)100 mL メスシリンダー
(5)ガラス棒(攪拌棒)
(6)100 mL メスフラスコ
(7)5 mL ピペット
(8)遮光ガラス瓶(保管用)
図5-1:電子天秤を用いて、フェリシアン化カリウム(1)を 50 mL ビーカー(3)で直接秤量します。
図5-1:電子天秤を用いて、フェリシアン化カリウム(1)を 50 mL ビーカー(3)で直接秤量します。
図6-1:前項で調製した 1 M 硝酸カリウム水溶液 をビーカーに少量加え、ガラス棒(5)で混合してフェリシアン化カリウムを溶解させます。100 mL メスシリンダー(4)は、ビーカーに硝酸カリウム水溶液を移す際に溶液こぼれを防ぐために使用します。
図6-1:前項で調製した 1 M 硝酸カリウム水溶液をビーカーに少量加え、ガラス棒(5)で混合してフェリシアン化カリウムを溶解させます。100 mL メスシリンダー(4)は、ビーカーに硝酸カリウム水溶液を移す際に溶液こぼれを防ぐために使用します。

図4-2:2 mMフェロシアン化カリウム溶液の調製に必要なもの:(1)フェロシアン化カリウム、(2)スパチュラ、(3)50 mL ビーカー、(4)100 mL メスシリンダー、(5)ガラス棒(攪拌棒)、(6)100 mL メスフラスコ、(7)5 mL ピペット、(8)遮光ガラス瓶(保管用)
図4-2:2 mMフェロシアン化カリウム溶液の調製に必要なもの
(1)フェロシアン化カリウム
(2)スパチュラ
(3)50 mL ビーカー
(4)100 mL メスシリンダー
(5)ガラス棒(攪拌棒)
(6)100 mL メスフラスコ
(7)5 mL ピペット
(8)遮光ガラス瓶(保管用)
図5-2:電子天秤を用いて、フェロシアン化カリウム(1)を 50 mL ビーカー(3)で直接秤量します。
図5-2:電子天秤を用いて、フェロシアン化カリウム(1)を 50 mL ビーカー(3)で直接秤量します。
図6-2:前項で調製した 1 M 硝酸カリウム水溶液 をビーカーに少量加え、ガラス棒(5)で混合してフェロシアン化カリウムを溶解させます。100 mL メスシリンダー(4)は、ビーカーに硝酸カリウム水溶液を移す際に溶液こぼれを防ぐために使用します。
図6-2:前項で調製した 1 M 硝酸カリウム水溶液 をビーカーに少量加え、ガラス棒(5)で混合してフェロシアン化カリウムを溶解させます。100 mL メスシリンダー(4)は、ビーカーに硝酸カリウム水溶液を移す際に溶液こぼれを防ぐために使用します。

図7:ビーカー内のフェリシアン化カリウム溶液を、100 mL メスフラスコ(6)に移します。ガラス棒を伝わせるようにメスフラスコに移すことで、溶液がこぼれないようにします。フェロシアン化カリウム溶液についても同じプロセスを繰り返します。
図7:ビーカー内のフェリシアン化カリウム溶液を、100 mL メスフラスコ(6)に移します。ガラス棒を伝わせるようにメスフラスコに移すことで、溶液がこぼれないようにします。フェロシアン化カリウム溶液についても同じプロセスを繰り返します。
図8:調製した各溶液を、遮光ガラス瓶(8)に移して保管します。
図8:調製した各溶液を、遮光ガラス瓶(8)に移して保管します。

  1. 電子天秤を使用して、0.0658 g フェリシアン化カリウム と 0.0844 g フェロシアン化カリウム(1) を 50 mL ビーカー(3)で直接秤量します(図5-1、5-2)。各試薬はスパチュラ(2)を用いてビーカーに移します。
  2. 前のセクションで準備した 1 M 硝酸カリウム水溶液 を、100 mL メスシリンダー(4) に充填します。 メスフラスコで容量を調整するため本来メスシリンダーは必要ありませんが、ビーカーに硝酸カリウム水溶液を移す際にこぼれを防ぐために用います。
  3. ビーカーに少量の 1 M 硝酸カリウム水溶液 を加え、ガラス棒(5)で混合した塩を溶かします。
  4. こぼれを防ぐためにガラス棒を伝わせながら、ビーカーの溶液を 100 mL メスフラスコ(6)に移します。
  5. 1 M 硝酸カリウム水溶液 でビーカーをすすぎ、メスフラスコに移すプロセスを数回繰り返します。
  6. 5 mL ピペット(7)を用いて 1 M 硝酸カリウム水溶液 を加えながら、メスフラスコの容量を100 mLに調整します。
  7. 調製した各溶液を、メスフラスコから遮光ガラス瓶(8)に移して保管します。保管期限の目安は、冷暗所にて約1ヶ月です。遮光ガラス瓶に、調製日などを記載したラベルを貼ることをお勧めします。

電気化学測定

電気化学測定は、溶液中の分子種などを定量的および定性的に分析する方法であり、電位(または電流)を人為的に制御する事で得られる電流(または電圧)を測定します。 測定システムは非常にシンプルで、電圧と電流を制御するポテンショスタット(またはガルバノスタット)と、測定フィールドとして機能する電解セルで構成されています。

典型的な電気化学測定は、電気化学測定システムによって行われます。

電気化学測定システム
準備するもの:
(1) モデル2325 バイポテンショスタット
(2) ソフトウェア制御用PC
(3) SVC-3 ボルタンメトリー用セル
(4) GCEガラス状カーボン電極 6.0x3.0mm
(5) RE-1B 水系参照電極(Ag/AgCl)

オプション:
(6) RE-PV 参照電極保存ビン(10mL)
  … 参照電極の保管用
(7) セル固定台
  … サンプルバイアルの転倒防止用

このシステムは、電気化学測定装置(ポテンショスタット)、測定サンプル(2 mM フェロシアン化カリウム + 1 M 硝酸カリウム、前章で準備)、ボルタンメトリーセル、及び測定装置のセルケーブルに接続された下記3つの電極で測定系を構成します。

  • 作用電極:電位が印加される事により、目的とする電気化学反応を引き起こします。
  • 参照電極:電気化学測定システムの参照となる電位(電圧)を提供します。
  • カウンター電極:作用電極と逆方向の反応をピックアップし、回路を形成します。

測定の準備

測定サンプルである、2 mM フェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])を含む 1 M 硝酸カリウム(KNO3)溶液 をサンプルバイアルに入れます。サンプルバイアルの容量20 mLに対して、5〜15 mLの測定サンプルが必要です。その後、サンプルバイアルに SVC-3ボルタンメトリーセル のテフロンキャップを装着します。

電気化学測定システム
SVC-3ボルタンメトリーセルのテフロンキャップは、外径6.0 mmの電極3本に対応しています。各電極をテフロンキャップに挿入して先端を溶液に浸し、モデル2325 バイポテンショスタットのセルケーブルを接続します。

モデル2325からのセルケーブルの接続:
(緑)GCEガラス状カーボン電極 6.0x3.0mm
(白)RE-1B 水系参照電極(Ag/AgCl)
(赤)Ptカウンター電極 5cm
   … SVC-3 ボルタンメトリー用セル に同梱

取り扱いに関する一般的な推奨事項:

  • 参照電極から黒い保護キャップを外すときは、製品に付属の取扱説明書の指示に従い、注意して取り外してください。
  • 電極をサンプルに浸した後、電極の表面とサンプル溶液の間に気泡がないかを確認してください。 気泡があると電極内の溶液と外部の溶液間の導通が取れなくなり、測定が正しく行われません。

モデル2325 ソフトウェアパラメータ設定

ソフトウェアのインストール時にデスクトップにショートカットを作成している場合は、デスクトップのアイコンをダブルクリックして、モデル2325のソフトウェアを起動します。
モデル2325のアイコンをダブルクリックします。

電気化学測定テクニックは、サイクリックボルタンメトリーを選択します。 サイクリックボルタンメトリーは反応速度とメカニズムの定性分析を行う事ができるため、物質の酸化還元反応を調査するための最初の手法としてよく使用されます。
ビー・エー・エス製の電極のほとんどは、今回使用するサンプル溶液【2 mM フェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])+ 1 M 硝酸カリウム(KNO3)】を使用してサイクリックボルタンメトリー測定を行うことで検査されています。


サイクリックボルタンメトリー測定の準備ができました。 [測定]を押してスキャンを開始します。

サイクリックボルタモグラム

ここでは、研磨前後の電極での測定結果の比較と、推奨される保管方法について説明します。

研磨前の測定結果
1回目の測定:適切な保管がされていなかった、GCEガラス状カーボン電極 6.0x3.0mm を使用して無処理で測定を行いました。
研磨後の測定結果
2回目の測定:0.05 µm 研磨用アルミナアルミナ研磨パッド で研磨した後、同じ電極を使用して測定を行いました。
重ね書きプロット
オーバーレイプロット:赤い線は1回目(研磨前)、青い線は2回目(研磨後)のサイクリックボルタモグラムです。研磨により電極表面の状態がリフレッシュされ、拡散律速による電流ピークが定量的に得られるようになりました。

サイクリックボルタモグラムの分析

リニアスィープボルタンメトリー(LSV)は、初期電位と最終電位の間を一定のスキャン速度で電位掃引し、その際の電流応答をサンプリングします。一方、サイクリックボルタンメトリー(CV)は、LSVの最終電位に到達した後、スキャン方向を逆にして初期電位に向かって再度スキャンするサイクルを、必要に応じて繰り返す測定方法です。
最初は電極付近に酸化体であるフェリシアン化物イオン([Fe(CN)6]3-)のみが存在している状態から、電極電位を負方向に掃引すると、還元反応が起こることでフェリシアン化物イオンが減少し、還元体であるフェロシアン化物イオン([Fe(CN)6]4-)が増加します。反応がさらに進行すると、電極表面からフェリシアン化物イオンが消失します。この瞬間にフェロシアン化物イオンの濃度勾配は最大になるため、電流値も最大(Ipc)になります。その後はフェロシアン化物イオンの拡散により、電流値は徐々に減少していきます。反対方向にスイープする際も本質的に同じ現象が発生し、フェリシアン化物イオンの濃度勾配が最大になるときに電流値は最小(Ipa)になります。
サイクリックボルタモグラムの解析

またモデル2325のソフトウェアを使用したデータ分析では、スキャンレートに対するピーク電流の平方根プロットの傾きから、拡散係数を計算することができます。

一般的な作用電極の研磨と保管

一般的な作用研磨を研磨する場合は、0.05 µm 研磨用アルミナ で研磨することをお勧めします。 ただし、それでも電極表面の再生がうまくいかない場合は、1 µm 研磨用ダイヤモンド をお試しください。
電極表面に付着したアルミナ粒子を確実に除去するため、新しいアルミナ研磨パッドで研磨剤を用いずに電極を更に少し研磨します。その後、電極表面を蒸留水ですすぎ、乾燥させます。

研磨手順gif

作用電極キャップ
作用電極の保管に推奨される方法は、先端をキャップで保護することです。これにより、電極表面が埃や傷から保護されます。

CV電極用キャップ
微小電極用キャップ

望ましくない測定結果を防ぐために、測定前に電極表面を研磨してリフレッシュすることを強くお勧めします。


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