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1.6 ハイドロダイナミックテクニック(HDM)

印加電位への電流応答は多くの因子によって決められます。そのうちでも重要な2 点は電子移動速度とバルク溶液から作用電極表面へ向かう物質移動速度です。物質移動が起こるには3 つの方法があります。

  1. 拡散ー濃度勾配による分子運動
  2. 泳動ー電位勾配による分子運動
  3. 対流ー振動、撹拌等の外乱よって起こる分子運動

ボルタンメトリー実験から定量的データを得るためには、物質移動モードが数学的に解析しやすい形に定義されていることが重要です。十分解離した電解液の添加によってすべてのボルタンメトリー実験から泳動の効果を無視できるようにします。拡散と対流を含む系になります。多数のボルタンメトリー実験で、溶液を撹拌せず、外部の振動を防止することにより対流が除去されます(このような条件は比較的短時間しか維持されません)。
静止溶液状態を使用するボルタンメトリーはサイクリックボルタンメトリー(CV)、クロノクーロメトリー、パルス、矩形波テクニックを含みます。対流なしの条件を持続することの実験的難しさに加えて、拡散支配の実験は物質移動速度を変える方法がないことが限界となります。

ハイドロダイナミックテクニックでは、分子はよく定義された仕方で電極表面に運ばれます。すなわち溶液を撹拌するか、或いは液体クロマトグラフィー/ 電気化学検出システムのようにポンプでフローセルに溶液を流します。最も広く採用されている方法は、回転ディスク電極を使って電極を回転することです。ハイドロダイナミックテクニックは電極表面へ出入する物質移動速度の向上の結果、静止溶液テクニックにはない多くの利点を持っています。物質移動と電子移動が釣り合う結果、より速い物質移動速度は定常状態に早く達することができ、スキャン速度が十分に遅い場合に(典型的には約20mV/s以下)定常状態が維持されます。

定常状態ボルタンメトリーの1 つの利点はある与えられた電位で電流がスキャン方向と時間の両方に依存しないことです。この場合、ボルタモグラムはシグモイド曲線になるのが特徴です。速い物質移動は定量分析の感度を向上させ、回転デイスク電極はストリッピング実験の析出ステップでよく使用されます。可逆プロセスの限界電流(物質移動支配の電流)はLevich 式で与えられます

i=0.62nFACD2/3ω1/2 ν1/6

n = 電子移動数/mole、F = ファラデー定数 (96,500C/mole)、A = 電極面積(cm2 )

C = 濃度(mole/cm3 )、D = 拡散係数(cm2/s)、ω =2 πf ((回転数)/rps)、ν = 動的粘度

従って、可逆プロセスの il対 ω1/2 のプロットは直線(Levich プロット)になります。
この場合、可逆とは物質移動速度と比較して速い電子移動が必要なこと、即ち、回転速度を増すとレドックス反応は可逆から凝可逆に移行する可能性があります。これはLevichプロットで 直線性からのズレに表われます。 電子移動速度は回転速度を無限に外挿した時の電流(kinetic current)から算出されます。

このkinetic current は逆Levich プロット(l / il 対1/ ω1/2)の切片から求められます。この方法は腐食とバッテリーの研究にしばしば使用されます。また電極表面上に被覆したポリマーフィルムを通る電子移動速度の測定にも使われます。

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ハイドロダイナミックモジュレーション(HDM)は回転周波数を正弦波的に変化させる関連テクニックです。 ilはω1/2に比例する一方、ω1/2自身も変化します。交流電流は通常のデータ処理法で処理されます。即ち、フィルターを通した後、整流又は位相弁別検出後にデータ処理されます。
Levich 式によれば、 il=K ω1/2であり、ここで ω1/201/2+ Δω1/2sin σ t ; (ω0は中心回転速度で周波数σ ,振幅Δω1/2のサイン波形で変調されます。図24参照)
交流電流出力は図25 で示され、Δiは下記式によって与えられます。

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図24.HDMテクニックを用いた回転速度の変調

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図25.HDMの交流電流出力

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