資料室


3-6 微小くし形電極

NTTが開発した微小くし形電極を紹介します。極微量物質の検出や反応挙動を観察するため微小電極を用いた電気化学分析が報告されています。この微小電極は、絶縁基板上にリソグラフィー技術を用いて微小電極パターンを作成したものです。電極形状は、下図に示す構造になっています。"くし"のようなパターンの2つの作用電極が向かい合って互い違いに配置されています。くしの本数は65対です。それぞれの電極は酸化電極、還元電極として働きます。

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  • 特長
  1. 高感度CV測定
  2. 微量サンプルの電気化学測定
  3. 小型集積化
  4. 高速応答性
  5. 導電率測定
  • 応用
  1. 液体クロマトグラフィー用電極
  2. 電気化学計測用電極
  3. バイオセンサー・化学センサー
  4. 化学修飾電極
  5. 化学反応工程管理用電極

1) くし形電極によるCV測定

くし形電極は微量物質のCV測定に大変威力を発揮します。くし形電極は作用、参照、カウンター電極が一体で成型されているので、各電極がサンプル溶液でつながるように電極上に滴下します。サンプルは数μl程度ですので、蒸発する恐れがあることから、その上にカバーガラス(5×5 mm)をのせて試料の蒸発を防ぎながらCV測定を行ないます。

CV測定の手順 cvedf57.gif


参照電極は事前に銀/塩化銀にメッキしておいて下さい。そして、ポテンショスタットを上記サンプルを載せた電極に接続します。サンプルが酸化還元物質であれば、作用電極の一方を定電位に設定し、残りの電極をスキャンしますと、サンプルのサイクリング反応が電気化学的に発生し、高感度分析を行うことが出来ます。

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図 3-20.くし形電極によるサイクリング反応

2)くし形電極の参照電極部使用法

くし形電極の参照電極部を利用する場合、銀メッキを行なう必要があります。微小くし形電極の参照電極の作製方法について説明します。

用意するもの:
011064 くし形電極Au 又は 011065 くし形電極Pt
011464 参照電極用銀塩化銀インク(2mL)

銀/塩化銀インクは厚い銀/塩化銀の多孔性高分子からできています。そのため、参照電極となる金属部分にインクを塗ることで、電極の材質に関わらず銀/塩化銀電極としてお使い頂けます。

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図1.くし形電極の作り方

  1. 銀/塩化銀インクは使用前にかき混ぜておく。5μl程度のインクを採取し、参照電極部分に塗布する。この時、絶縁膜に覆い被さった参照電極部分にはインクを塗布しないようにする。測定窓内の参照電極となる部分全体をインクで塗布します(図2参照)。
  2. インクを参照電極に塗布したら、電極を121℃のオーブンに2分入れ、インクを乾かす。
  3. 電極表面を軽く、蒸留水にて洗い流し、水滴を拭取る。

以上の工程で、参照電極を銀/塩化銀電極としてご使用頂けます。

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図2.インクを参照電極部位に塗布


3) 洗浄について

くし形電極を実験で使用した後は、エタノールですすいだ後に純水で十分に洗い流して下さい。

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図5.くし形電極の破損

基本的にくし形電極の繰り返し利用をお勧めしておりません。汚れがひどいからといって超音波洗浄を長時間、または繰り返し行ないますと、くし形電極の基板上から絶縁膜および電極が剥がれることがあります。基板上から絶縁膜が剥離し、作用電極、カウンター電極が剥がれた状態になりますと、電極として機能しません。
次の操作を行いますと、絶縁膜および電極の剥離が起こることがありますのでご注意下さい。

  1. 長時間、または繰り返し超音波洗浄した場合
  2. オゾンクリーナーで長時間洗浄した場合
  3. 綿棒など物理的手段にて電極表面を研磨した場合
  4. 薄膜のガスケットを使用しフローセル電極とくし形電極をセットし、カウンター電極に接触した場合
  5. アセトンなどの有機溶媒に長時間浸漬した場合

特にカーボン、金電極は白金と比べてガラス基板から剥離しやすい性質があります。

4) ピンの接続について

  • くし形電極の場合

くし形電極はガラスの表面に形成されておりますので、専用のケーブルとテフロンプレートを用いて電極端子の接続を取ります。

1.くし形電極をテフロンプレートの上に載せます。
2.専用ケーブルのソケットに上記電極の組み合わせを差し込みます。
3.ケーブルは予めミニバイスに固定します。

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図6.くし形電極の固定
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ケーブルの接続方法 赤:参照電極、白:W2作用電極 緑:カウンター電極、黒:W1作用電極
  • リング-ディスク電極の場合

フィルム電極の片端はFPCが固定してあります。FPCにはコネクターが ハンダで固定されています。下図のようにコネクターが取り付けてありますので、小さいワニ口クリップを用いて接続して下さい。そして、ポテンショスタットをケーブルに接続して測定を行ないます。

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図7.リング-ディスク電極の接続法

5) くし形電極取扱いの注意

 くし形電極の対極面積は作用極に比べて大きいことが理想です。大きな面積部分(図中のカウンター極)を参照極にしても問題はありませんが、濃度の高いサンプルをシングルモードで使用しますと、カウンター電極に過電流が流れることがあり、測定に影響することが考えられます。参照極とカウンター極の配線にご注意下さい。

 参照電極用銀塩化銀インクを使用する際、参照極の面積が小さいので注意が必要です。ただし、くし形電極をサンプルに浸漬して使用する場合、カウンター電極を別に用意すれば、取り扱いが容易なカウンター極に銀塩化銀インクを塗布しても構いません。
 サンプルを分析窓に滴下して測定する場合は、銀塩化銀インクは必ず参照極に塗布し、配線を間違えないで下さい。

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