資料室


3-4 還元物質のモニタリング

LCECは主として電気化学的に酸化できる物質(カテコールアミン、インドールアミン等の神経伝達物質)の測定において著しい進歩を遂げました。これに比較して還元物質への応用は緩やかでした。理由としては移動相と試料に含まれる溶存酸素が大気圧下で10-3〜10-4M存在することにより、負電位下での分析に問題を投げかけていたことが挙げられます。

1) 酸素の電気化学反応

酸素は容易に電極によって還元されH2O2あるいはH2Oを形成します。図3-10,3-11によれば印加できる負電位は酸素の還元電流が過大にならない、ごくせまい範囲に限定されます。即ち移動相と試料中の溶存酸素が分析に影響します。

cvedf16.gif
図3-10.グラッシーカーボン電極とアマルガム電極による酸素のボルタモグラム

cvedf17.gif
図3-11.電極材質による還元電位範囲
A:通常の移動相の還元電位範囲 B:溶存酸素後の還元電位範囲

2) 移動相中の溶存酸素の問題

LCECによる微量分析を行なう場合、移動相に含まれる溶存酸素が電極表面で反応して高い残余電流を発生しますので、分析を行なうことができません。図3-12に示されるように移動相の脱酸素を効果的に行なうことにより、残余電流の発生を抑えることができます。

cvedf92.gif
図3-12.移動相およびサンプル中の溶存酸素除去装置

3) 試料中の溶存酸素の問題点

試料中に存在する酸素によって起こる問題点は以下の通りです。

  • 1.リテンションタイムが一定でない
  • 2.ピークはブロードになりテーリングも発生
    • 1、2は酸素による影響ですから、試料中の酸素を除去する必要があります。除去方法とは試料をインジェクションする前に不活性ガス(N2ガス)パージして酸素を除去してしまうことです。不活性ガスの流量とパージ時間を綿密に制御し再現性の良いインジェクション量を決定することが重要です。このシステムの問題点としては次の2点があげられます。
  • 1.揮発物質を含んだ試料には不向き
  • 2.注入量に制限がある

4) デュアル電極による酸素除去

電極を直列にして用いることにより、試料中の酸素除去を行なうことができます。試料中の酸素は電気化学的に反応してH2O2またはH2Oを発生します。これは非可逆的反応です。また、試料は可逆的な酸化還元反応をします。図3-13に示しているW1電極に負電位を印加して酸素を還元させW2電極で酸化反応を起こさせますと、W2電極への酸素の干渉は効果的に除去できます。ですから試料中の酸素の除去を必要としなくなります。還元反応による分析適用範囲として可逆的に酸化還元できる物質になります。図3-14は酸化還元反応を用いて分析して得られたクロマトグラムです。

cvedf19.gif
図3-13.デュアル直列電極による溶存酸素の除去

cvedf20.gif
図3-14.デュアル直列電極による酸化還元物質のクロマトグラム
  • 分析条件
  • サンプル
    • 1:1,4-Dimethyl aminophenyl-azobenzene-4-sulfonic acid(56.4pmol)
    • 2:3,5-dinitrotoluene(46.8pmol)
    • 3:3,4nitrotoluene
  • 移動相 0.1M酢酸ナトリウム,pH5.0,n-プロパノール
  • カラム バイオフェーズ Octyl 5μm,4.6x250mm
  • 電位 -850mV,+450mV(Glassy Carbon)
  • 流速 1.1ml/min
  • レンジ 5nA/FS

line
トップページ  ボルタンメトリー用電極ハンドブック  3 サイクリックボルタンメトリー(CV)用電極