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4.0 iR 補償コマンド

このコマンドを使用すると溶液抵抗とセル時定数、自動またはマニュアルによるiR 補償の使用または使用しない設定を行います。システムはiR 補償ダイアログボックスを表示し、iR 補償条件を設定できます。

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iR 補償設定画面

iR 補償試験結果

iR テストボタンをクリックすると、システムは溶液抵抗とセル時定数試験を行い、結果はここに示されます。システムは必要な補償レベルに到着するまで徐々に補償レベルを上げるか、またはシステムが不安定になるまで安定性をテストします。実際の許容補償レベルと未補償抵抗が表示されます。未補償抵抗は算出された抵抗と許容補償レベルから算出されます。最大許容抵抗補償はi/E コンバーターのフィードバック抵抗に制限されることに注意してください。

iR 補償試験

iR 補償試験を開始する前に、テストパラメータをチェックします。テスト電位は電気化学反応が起こらないテストポテンシャルです。システムの試験を行う時、テストポテンシャルの近傍でポテンシャルステップを印加します。

テスト電位の範囲は-10V 〜+10V です。ポテンシャルステップ振幅を調整します。振幅を大きくするとS/N 比は良くなります。しかし、振幅を大きくしすぎるとファラディー電流が流れます。0.05V ステップ振幅が推奨されます。ステップ振幅の範囲は0.01 〜 0.25 V です。補償レベルは溶液抵抗を測定に基づいて補償したい抵抗の割合です。パラメータの範囲は0〜 200% です。デフォルト値は100% です。

オーバーシュートレベルは安定性試験の基準です。ポジティブフィードバック量を増加しますと、システムは不安定になります。ポテンショスタットが発振開始する前に、ポテンシャルに応答する電流のオーバーシュートが表れます。許容のオーバーシュートが高くなると、可能な補償レベルも高くなりますが、システムの安定性は悪化します。パラメータの範囲は0 〜 100%です。デフォルトレベルは2% です。

iR テストボタンをクリックすると、システムは溶液抵抗と安定性を試験します。結果はiR補償試験結果ボックスに報告されます。
iR 補償の詳細については下記の文献を参照して下さい。

"Intelligent, Automatic Compensationof So lu tion Resistance" P. He, and L. R. Faulkner, Anal. Chem., 58, 517-523 (1986).

次の測定のiR 補償

このボックスがチェックされますと、次の測定のiR 補償は使用可能です。自動補償が設定され、iR 補償試験が行われないか、または感度スケールが変更されているならば、iR 補償は使用できません。このオプションはコントロールメニューの測定条件コマンドからオン、オフできます。

iR 補償使用可

オプション" 一回" が選択された場合、iR 補償は次の測定にのみ適用され、次に使用不可になります。連続測定に適応される同じ補償条件が必要ならば、" 常時" オプションを選択します。オプションを選択するために最適なラジオボタンをクリックします。

iR 補償モード

自動iR 補償またはマニュアルiR 補償を選択できます。自動iR 補償はiR 補償試験結果に基づいています。補償したい抵抗を入力することによりマニュアルiR 補償を選択できます。オプションを選択するために最適なラジオボタンをクリックします。

マニュアル補償抵抗

マニュアルiR 補償を選択する場合、システムに補償させる抵抗値を入力します。補償レベルに注意して下さい。補償レベルが実際の溶液抵抗に近寄るか、または超えている場合、ポテンショスタットは発振します。最大許容抵抗補償はi/E コンバーターのフィードバック抵抗に制限されます。このパラメータは自動iR 補償が選択された場合、有効ではありません。

iR 補償

ポテンショメトリックな実験では、作用電極と参照電極の界面領域を横切る電位降下の合計はこれら2 電極間の印加電位と同じと仮定しています。溶液抵抗による2 電極間のiR降下があるからです。この抵抗は支持電解質を添加することにより下げらますが、多くの場合、考慮する必要はありません。このような場合、電気的に補償できます。

  1. 未補償抵抗の測定
  2. 補償と回路安定性試験

未補償抵抗の測定 

この測定では、電気化学セルは電子工学的にRC 回路と等価と考えます。即ち未補償抵抗Ruは、二重層容量Cdl と直列です(図4-1)。 ファラディーインピーダンスをこのモデルでは考えに入れないので、テストポテンシャル(テスト E)はファラディー過程が起こらない値にしなければなりません。ポテンシャルステップ(ΔE)は、このポテンシャル付近で印加します(即ち、テスト E -25mV からテスト E +25mV)。

電流はステップが印加された後、54 μ s と72 μ s においてサンプリングします。 電流は指数関数的に減衰するので(図4-2参照)、初期電流l0はゼロ時間に外挿することにより算出されます。ΔE=l0Ru なので, Ru はこの測定から算出されます。表4-1 は指数関数の外挿によるいくつかのダミーセルの抵抗測定の結果を示します。時定数が200 μ s より大きい場合、非常に良く一致します。しかし、時定数が100 μ s 以下では、誤差は大きくなります。従って、自動iR 補償は、未補償抵抗が低いか、時定数が小さいときには有効に働きません。この誤差は理論通りにいかない電流応答の急激な立ち上がりによるとみられます。

表4-1. 指数関数の外挿による測定抵抗と時定数a
Ru/ Ω 測定RC 時定数/ μsb 測定Ru/ Ω Ru 測定の誤差(%)
50.3 38 29 -42
100.4 94 92 -8.4
150 146 145 -3.3
200 198 198 -1.0
250 250 249 -0.4
300 302 301 +0.3
347 350 349 +0.6
401 406 404 +0.7
452 360 449 -0.7

a: P. He, L.R. Faulkner, Anal. Chem. 58 (1986) 523

b: 10 μ F の容量を使用

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図4-1. 抵抗算出に使用するRC 回路

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図4-2. 電流応答の指数関数減衰

補償と回路安定性試験

補償はポテンショスタットのポジティブフィードバックによって行なわれます。しかし補償が100% よりかなり小さくても回路が不安定になるという問題が起こることがあります。それゆえに、ポジティブフィードバックは算出した未補償抵抗の一定割合を段階的に付加していきます。即ち、80% まで5% ずつ、80% から90% まで2% ずつ、その後1%ずつ増加します。
未補償抵抗を増加した後、回路の安定性はテストされます。補償の程度はユーザーが定義できます(デフォルト値=100% とする)。安定性試験では、テスト Eを挟んで50 mVステップが印加されます。ベースラインはポテンシャルステップを印加する直前のデータを集めることによって測定されます。そして、このベースライン値をステップデータから減算し、正味電流値とします。

補償量を増やすに従い、最初の電流応答は指数関数的減衰後、リンギング効果を示し(図4-3参照)、振動します。前振動リンギングの程度はオーバーシュートとして定義する量で数量化します。オーバーシュートは極小(ネットネガティブ)電流値(I 最小)と極大電流値(I 最大)との比率で定義し、パーセントで表示します。即ち、オーバーシュート=(I最小/l 最大 )x100 です。最大許容オーバーシュート値はユーザーが定義できます(デフォルト値=10% です)。

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図4-3. iR 補償によるリンギング効果

もし測定オーバーシュート値が最大許容値以下ならば、補償は続けられます。もし許容値より大きく、補償の希望するレベルにまだ達していないなら、回路を安定させるために参照電極とカウンター電極の間にコンデンサーを挿入します。そして補償が必要なレベルに達するか、オーバーシュート値が越えられるまで(もしこれが起こるならば、実験で使う補償量をわずかにこの値から減少します)テストを続けます。補償レベルを増やす1つの方法はオーバーシュートパ−センテ−ジを増やすことです。40%までは通常、安全です。

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