資料室


2.3.微小くし形電極の特長

くし形電極はバンド電極の集合体ということに加えて、2 つのくし形電極をかみ合わせて配置することにより他の電極では見られない興味ある挙動を示す。すなわち、一方の電極(G極:generator elec trode) で酸化したレドックス種をもう一方の電極(C極:collectorelectrode)で還元させることができる。
類似の実験は回転リングディスク電極でも行なえるが、くし形電極の場合還元されたレドックス種が元の電極に拡散して戻る「レドックスサイクリング」( 図 2) が生ずるため電流値が見かけ上増大する。
さらに、G極とC 極の間でリニアな濃度勾配が直ちに形成されるため、定常状態に達するまでの時間が短くなり、高速応答性を示す。また、C極の電位を一定にしてG 極の電位を掃引するとG極の逆反応がC極で定できる。C極の電位は一定であるから、測定時に充電電流が流れず、S/N比が向上する。
さらに、可逆性の物質と非可逆な妨害物質が共存する場合、G極で酸化された妨害物質は電気化学的に不活性でC極で検出できないため目的物質のみが選択的に検出できるようになる。

me2.gif
図2.レドックスサイクルの概念図

くし形電極における定常状態の限界電流は二次元の拡散方程式を解くことにより解析的に求めることができ、次式で表される12

  • Ilim = 2mbnFC*D K(1-p)/K(p)        
  • p = 4S / (1+S)2              
  • S = sin(πg / 2w ) / cos(π (wa - wc / 4w )   
  • w = (wa + wc )/ 2 + g  


    ここでK()は第一種完全楕円積分、m、b、n、F、C*、D、wa、wc、gはそれぞれく
    しの数、くしの長さ、電子の数、ファラデー定数、バルク濃度、拡散係数、アノード、
    カソードの電極幅および電極間隔を示す。アノードとカソードの電極幅が同じで
    g<0.85wの時には次式のように近似することができる。

Ilim = mbnFC*D {0.637 ln (2.55w /g ) - 0.19 (g /w )2} (5)

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