資料室


1.3.0 パルステクニック

リニアースイープテクニックの不利な点の1つはバッククラウンド(容量性電流)電流の存在です。そのためこれらのテクニックを濃度の定量に使うことは、得策ではありません。
検出限界はこのバックグラウンド電流によって影響されます。

すべてのパルステクニックの基礎は、ポテンシャルステップ後のバックグラウンド電流とファラディー電流の減衰速度に差があることです。 バックグラウンド電流は指数関数的に減衰し、一方、ファラディー電流は1/(time)1/2 の関数として減衰します。即ち、バックグラウンド電流の減衰速度はファラディー電流の減衰よりかなり速いのです。 バックグラウンド電流はポテンシャルステップ後、 5RuCdl 時において無視できます。(RuCdlは電気化学セルの時定数でμ s 〜 ms 範囲になります)それゆえ、この時間後は、測定電流はファラディー電流だけと見做すことができるようになります。

  • パルステクニックの重要な変数は次の通りです。
    • a. パルス振幅はポテンシャルパルスの高さで、mV 表示です。
    • b. パルス幅はポテンシャルパルスの継続時間で、msec 表示です。
    • c. サンプル幅は電流が測定されるパルスの経過時間(msec)です。

少なくともパルス幅より3msec 短くなければなりません(3msec は容量性電流がゼロに減衰するために必要です)。電流はmsec 当たり16 回サンプリングされ平均されます。サンプル時間のデフォルト値は17msec です。つまり、これは商用電源(60Hz)の1 サイクル~の時間です(従ってラインノイズは平均化してゼロになります)。

  • d. パルス間隔/ 滴下時間-これは1ポテンシャルサイクル(msec)に必要とされる時間であり、少なくともパルス幅の二倍でなければなりません。パルス間隔がボルタンメトリー実験に使われ、滴下時間はポーラログラフィー実験、ポテンシャルパルス、電流サンプリングと水銀滴の滴下は相互連関しています。

ポテンシャルパルス波形とサンプリング時間数が異なった、3 つのパルステクニックを紹介します。バックグラウンド電流を除去できることが、向上した感度と低い検出下限とあいまって(リニアースイープテクニックと比較して)、これらの方法を濃度の定量の理想的なテクニックにしています。

1.3.1 階段波ボルタンメトリー(SCV)

直流ポーラログラフィー実験の改良版で、水銀滴の表面積の変化の効果を減少するように設計さ れています。ポテンシャル波形を図10 に示します。ポテンシャルは一定のステップで変化します(滴下時間サイクルと完全に同期させます)。電流は各々の滴下の終了時にサンプリングされます。滴下時間とステップのサイズを種々の値に設定できます。 このポテンシャル波形は時には階段波形とも言います。

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図10 SCP のポテンシャル波形

電流応答は図11 に示します。限界電流(id)はllkovic 式によって与えられます。

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図11.SCV の典型的な電流応答

id = 708nD1/2Cm2/3τ1/6

n = 電子移動数/ モル
D = 拡散係数( cm2/s)
C = 濃度(mol/cm3 )
m = 水銀流速(mg/s)
τ = サンプリング間隔

SCV の感度と検出限界は直流ポーラログラフィー(5 μ A /mM,10-5 M)に類似しています。直流ポーラロに対するSCP の主要な利点はスムージングされた電流出力で、そのため半波電位と限界電流の測定が容易になります。これは本質的にはポーラログラフィーテクニックですが、低スキャン速度ボルタンメトリーテクニックとして使えます。この改良版は階段状ボルタンメトリーと呼ばれます。

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